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私の彼は日本食が苦手な外国人

日本食が苦手な彼

私の彼は日本食が苦手なんです。

日本の麺料理は大好きだって言っていたのに、
昼食のときに「そば、うどんに甘いスープは、変だ」って言い出したんです。

関西風のうどんは色も薄くてダシが効いてさっぱりしてますが、
蕎麦って、醤油味とダシの濃い味がなければダメだと思いませんか?
彼はラーメンが日本の麺料理だと思っていたみたいです。
そちらのほうが変わっていると思いますけど、海を渡ると誤解も無理もないのかも、なんて自分を納得させました。

結局食べられなかったので、メニューの写真を見てカツ丼を注文しました。
……「食べられない。砂糖味のオムレツはとても変」
前に居酒屋のだし巻き卵はおいしく食べていたのですが、
私が馴染みやすいと勝手に判断して、
カツ(肉)が入っていておいしいと説明したのが悪かったのかもしれません。
なまじ馴染みがあって味の想像がつくものが、醤油と砂糖で煮こまれていたのが異質だったのでしょう。

でも、彼だって、パンを食べるときに大量のジャムを食べるんです。
ジャムをスプーンひと盛りすくってポンとパンに落としてパクパク食べるんですから、砂糖が苦手なわけではないのです。

彼いわく、外食では健康的なメニューを選択する日本人が多いのに、
家庭料理(デザートではなくお惣菜)で砂糖を使ったメニューが多いのはとても不思議なのだとか。
彼だってジャムをたくさん食べることを指摘すると、あれは果物の保存食で、節約であり、ヘルシーなのだと言われ、
ぜんぜん解決にならず、うんざりして会話を打ち切ろうと思っていたところで、彼が言いました。
「日本人だって梅干し食べるでしょ、あれと同じ。梅干しは体に良いけれど、
日本の料理がすべてあんなに塩からいわけじゃない」なるほど。目から鱗が落ちました。

新しい学び

私だって梅干しについて聞かれたら、クエン酸が多くて疲労回復に良く、
夏には塩分もとれる健康的な保存食と答えたでしょう。なんだか彼のジャムの言い訳の焼き増しみたいですけど。
ただ、彼は日本の既成品のジャムの値段を知ってビックリしていました。

これからは少しだけ食べるようにする、パンが見えるくらい薄く塗るよと、
嫌味じゃないかと思うくらい言われましたが、日本は砂糖を使った料理が多くて果物もとれるのに、
ジャムが高価なのは私も不思議だと思うようになりました。私が思うに、彼は少し理屈っぽいんです。
納得すると、食べ慣れないものでも食べますが、納得しなければスルーするのではなく、理屈をこねだすので困ります。

またしても蕎麦屋での出来事です。彼はメニューの写真を見て熟考して、
私が材料は鶏だと言うと、雉焼き丼を注文しました。彼の好きな焼き鳥と同じなので大丈夫です。
『これ、キジだよね』
「ニワトリだよ。ブロイラー」
『でもキジでしょ。なんでニワトリなの。ちょっと聞いてきて!』
「あなたが聞いてくればいいでしょ!」
彼は頭を下げて挨拶しながら厨房に行きました。
白衣のおじさんの返事は当然「ニワトリだよ」でした。

ほらね、と言いたいところですが、ここからの彼がしつこくて、
お店の人が怒ってしまわないか、私はハラハラでした。
「キジは天然記念物だから、料理したら逮捕されるよ。プリズン、ね?」
逮捕の日本語はわかりますが、天然記念物は私が説明しました。
「昔は脂が多くておいしいからキジを使ったんだよ。
鶏だからニワトリ丼って寂しいでしょ。だから雉焼き丼って言うの」
彼は納得して、上機嫌でした。

まぁ確かに日本語って日本人の私でも疑問に思う言い回しとか、
敬語とか難しい表現が多いですよね。
と、なると私の彼も含めて日本食が頭からキライなわけじゃなくて、
終始「納得」させられる理由が必要って事なのかな。
そういう外国人って少なくないかも知れないですね。